「この山の上に八葉の蓮華のような大きな岩があり、そこは紫雲たなびく美しい場所である。ここが観音の聖地である」。『石山寺縁起絵巻』第1巻には、近江の守護神 比良明神が石山の地についてこのように述べる場面が描かれています。このことから、石山寺は古来より神聖な土地として人々の信仰を集めていたことがわかります。
石山寺は、その名の通り石の山の上に建つお寺です。境内の本堂前には大きな岩がそびえたっています。こちらは天然記念物の「硅灰石」というもので、世界的にも珍しいものです。本堂や多宝塔はこの「硅灰石」の上に建てられています。
天智天皇の時代には、この地は石切り場とされ、石山寺の石が奈良 川原寺の本堂の基礎石として使われていたことが、近年の研究でわかりました。昔の人々は、奇岩ともいえる「硅灰石」のこの山を、神仏のよりどころのように感じていたのではないでしょうか。
また、石山寺の東大門前はアジアでも最大級の淡水産貝塚が発見された地でもあります。こちらの貝塚は紀元前7000年前の縄文時代のものと考えられており、土器、人骨、石器など特色ある遺品が出土しました。人々が生活していた痕跡から、その時代より石山の地は湖と山の幸に恵まれた、住みよい土地であったといえるでしょう。