学問の寺

石山寺には、すぐれた教学が花開き、学僧らによって経典類「石山寺一切経」と聖教類「校倉聖教」「深密蔵聖教」が編纂されました。平安時代、石山寺は華厳宗から真言密教の道場となりますが、僧侶らは経典や聖教を収集し、仏の教えを日々研究・実践していました。伝えられた膨大な経典と聖教からは、学僧たちの研鑽と護持の努力が伺い知れます。学問の寺となった石山寺には、皇族や貴族の信頼が寄せられ、度重なる「石山詣」が行われることになったのです。

薫聖教<国宝>と淳祐内供

石山寺の第三代座主 淳祐内供の自筆の聖教類

石山寺の寺伝で「薫聖教」と呼ばれ、特に大切に扱われてきた一群の経巻です。石山寺の第三代座主であった淳祐内供(890〜953)自筆の聖教として国宝に指定されています。
淳祐内供は、寛平2年(890)菅原淳茂の子、即ち菅原道真の孫にあたる人物です。幼くして家を出て、真言宗小野流の観賢の下で出家し石山寺普賢院に隠遁しました。延喜21年(922)10月25日、師の観賢が醍醐天皇の勅を受けて、弘法大師の諡号(おくり名)と紫衣を下賜するために高野山の空海の御廟に参じました。淳祐もその場に立ち会った際、弘法大師の膝に触れた手に芳薫が移り、何時までもそれが消えなかったといわれています。その薫香の残る淳祐内供自らの手で書写した聖教は「薫聖教」と呼ばれ、座主代々によって特に大切に伝えられてきました。
梵字を書写したものが多く、当寺の悉曇学の状況を知る上で非常に貴重な資料でもあります。

薫聖教<国宝>
薫聖教<国宝> 七十三巻一帖
淳祐筆 平安時代中期「悉曇字母」一巻(薫聖教第15号)

石山寺一切経<重要文化財>

総計4,644帖にのぼる経典群

「一切経」とは、仏の教えを説いた「経」、僧侶の守る決まりを示した「律」、仏教の教義を論じた「論」の「三蔵」を主体とした仏教関係書籍のコレクションです。仏教の伝わった国々では、古くからこの一切経を寺院の経蔵にそなえ信仰の対象や研学の糧としました。石山寺には奈良時代から江戸時代までに書写された4,644帖にのぼる経典群を所蔵しており、それらは「石山寺一切経」と呼ばれています。

「石山寺一切経」のうち、奈良時代のものが310点、平安末期のものが約3,000点、室町時代のものが約600点、その他は平安初期か鎌倉時代のものとして、重要文化財に指定されています。奥書によると、平安末期の約3,000点は沙門念西の努力によるものであり、室町時代のものは善忍律師の勧進によって集められたものであることがわかっています。また、正倉院文書によると、天平宝字5年(761)の暮れから翌年の夏にかけて、石山院の堂塔伽藍26棟が造営された時、その一つとして間口約9m、奥行き約3.7mの経蔵が建てられ、同時に設けられた写経所で600巻の大般若経が書写奉納されたことがわかります。

「石山寺一切経」が完全な姿を保っているのは、江戸時代の学僧尊賢僧正が中心となって整備に尽力されたほか、歴代の僧侶たちによる護持の努力のおかげといえます。

石山寺一切経<重要文化財>
石山寺一切経<重要文化財> 四六四四巻 奈良〜室町時代
石山寺一切経のうち『瑜伽師地論巻第二十一』
石山寺一切経箱
石山寺一切経箱
境内の豊浄殿にて一切経を収蔵

校倉聖教<重要文化財>

1,926点にも上る修法の行儀作法を記した聖教群

石山寺境内の経蔵に、「石山寺一切経」と一緒に納められていた30函1,926点の聖教群で、密教における修法の行儀作法を内容とするものが中心です。鎌倉時代建立の校倉経蔵に収められていたことにちなんで、「校倉聖教」と名付けられました。聖教とは、僧侶の勉強のための学問ノートのようなものです。『石山寺縁起絵巻』第6巻には、石山寺の学僧朗澄律師がこの聖教類の編纂に尽力し、「死後、鬼になって守る」という誓いを立てられたお話が描かれています。
時代的には平安時代約1,400件で全体の77%、鎌倉時代約300件で同18%となり、両時代のものがほとんどです。江戸時代明暦元年(1655)に制作された函に収納されています。また、平安時代のなかでも院政期のものが1,240件で67%を占め、この様相は実は先の「一切経」の時代別構成と全く重なっています。さらにこの院政期に書写した人物は、先の「一切経」の補写にかかわった人々と共通しています。
なお、この校倉聖教は、平成13年(2001)より文化庁・滋賀県・大津市の指導監理のもと、順次修理が行われています。

校倉聖教<国宝> 画像
校倉聖教<重要文化財>
平安時代後期写「大毘盧遮那成仏成就儀軌巻上」一巻(校倉九函6号)巻途中

石山寺深密蔵聖教

明治までに石山寺諸院坊に伝わっていた聖教が集められたもので、111函、約20,000点が存在します。江戸時代の聖教が中心ですが、一部平安時代のものも含まれています。

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