第三回石山寺俳句大賞 入選発表
この度は「第三回石山寺俳句大賞」へ多くの投句をいただきまことにありがとうございました。回を重ねるごとに素敵な句が増え、選ぶのにとても苦労しながら以下の入選を決定いたしました。
今回入選した句は、12月下旬から2年間、石山寺境内(芭蕉庵前)の立て札で掲示されます。
なお、各賞の賞品は10月下旬にお送りする予定です。
重ねて、多くの投句いただいた皆さまへお礼申し上げます。
応募総数 634句
◯紫式部賞(最優秀賞)
・門前共通商品券「光ルくんチケット」3,000円分
・石山寺紅葉ライトアップ「あたら夜もみじ」招待券ペア1組
物思ふ 式部の筆や 望の月
(60代・女性)
我を抱く 君もろともに 月抱く
(女性)
<選考委員より>
(物思ふ)
平安時代、時の中宮からの「新しい物語」のリクエストを受けた紫式部が石山寺に参籠して『源氏物語』を書き始めたと伝わっています。今回、その伝承にちなんだ句も多く寄せられました。その中で、望の月(十五夜)のもと、紫式部が新しい物語をあれこれ思い悩む情景が、美しく表現されたこの句が選ばれました。
(我を抱く)
審査員の投票数が最も多かったのがこの句。この数年、人との距離がとても遠くなったように思います。この句は、月光のもとストレートな人との触れ合い(愛)が表現されていて、どこか懐かしくも儚さが心にしみる句だと思いました。はやく愛の表現に遠慮がいらない日が戻ってくることを願います。
◯松尾芭蕉賞(優秀賞)
・門前共通商品券「光ルくんチケット」2,400円分
・石山寺紅葉ライトアップ「あたら夜もみじ」招待券ペア1組
月出たよ 口数少ない 父の声
(30代・女性)
ススキの穂 風になびいて 空を掃く
(40代・女性)
異国の地 満月ささやく 大丈夫
(30代・男性)
<選考委員より>
(月出たよ)
この句も多くの審査員の票を集めました。美しいものは人を雄弁にすると言いますが、日ごろ無口なお父さんのこのひと言だけでも、月のチカラを感じますね。一七文字に、何気ない家族のひとこまがとてもうまく表現されていると思いました。
(ススキの穂)
ススキを箒に見立てた秀逸な句です。空にかかった雲を掃いて、きれいなお月さまを見せて欲しいといった願いも込められているのでしょうか。静かな中に美しい情景が表現されていて、松尾芭蕉賞にぴったりな句だと思いました。
(異国の地)
当たり前のことですが、世界中の人は同じ月を見られるのですね。故郷から遠く離れた国を旅する人、もしくは故郷を離れなければならなくなった人、そんな人々の不安を、月が故郷の家族や友人に替わってやさしく励ましてくれているように思います。
◯石山秋月賞(佳作)
・門前共通商品券「光ルくんチケット」1,200円分
・石山寺紅葉ライトアップ「あたら夜もみじ」招待券ペア1組
珪灰石 夜の魔法で 月世界
(男性)
満月に 伸ばした孫の 手は紅葉
(50代・女性)
産声を 弓張月と 待つ窓辺
(60代・女性)
亡友と キャッチボールや 今日の月
(70代・男性)
ムーンライト ハイライトふかし 秋ふかし
(男性)
<選考委員より>
(硅灰石)
毎年中秋に行われる石山寺秋月祭では、境内にそびえる硅灰石がライトアップされ不思議な景色を作り出します。花崗岩と石灰岩が熱変成したこの巨岩は照らされると銀色に輝きます。この景色を月面に例えて空のお月さまとあわせてふたつの月見にしたあたりが、新しい発見でした。
(満月に)
石山寺では11月中旬から紅葉が見頃になります。境内の多くがイロハモミジという種で、小さな葉が緑から黄、赤とグラデーションに染まります。この小さな葉はまさに孫の手のようにかわいく見えます。手を伸ばした孫の手とモミジの葉が月夜に浮かび上がる景色がかわいく表現されていました。
(産声を)
今年は家族をテーマにした句が多く感じます。この句もその中のひとつ。わが子(もしくはお孫さん)の誕生を待つ緊張感がひしひしと伝わってきます。これから満ちていく弓張月(上弦の月)がとても効果的だと感じました。
(亡友と)
夜空を見上げると多くの顔が浮かんでくるように思います。まん丸の月が白球に見え、懐かしい友の顔が思い浮かんだのでしょう。きっと空のお友達といろんなお話をされたのでしょう。切なくも素敵な時間を作られたことを嬉しく感じます。
(ムーンライト)
韻をふんだリズミカルな句です。「ムーンライト」は多くのジャズのタイトルに使われる言葉でもありますね。「ハイライト」はタバコの中でも渋い(こだわり・ダンディ)な銘柄。秋ふかし(秋深し・秋更かし)の両方にもとれる言葉。月光のもとジャズでも聞きながら紫雲をくゆらす、なんて想像しました。
◯雅賞(特別審査員賞)
・門前共通商品券「光ルくんチケット」3,000円分
・石山寺紅葉ライトアップ「あたら夜もみじ」招待券ペア1組
読みかけの 本からはらり もみじの葉
(女性)
青蜜柑 酸味懐かし 万国旗
(女性)
<選考委員より>
(読みかけの)
しおりがわりに使っていたのでしょうか、昨秋の紅葉。1年ぶりに開いた読みかけの本からはらりと落ちてくる。あぁ、もう1年も経ったのか、と感慨深くなる。そんな心情が表現されている句ですね。この方が詠んだ「母真似て 塩ふたつまみ 新小豆」も最終選考まで残っていましたが、こちらの句が雅賞となりました。
(青蜜柑)
運動会で食べた早生のみかん。酸味が強いけれど、なんなら逆にその酸っぱさが体に心地よかった。そんな懐かしい思い出を詠んでくれました。季語を「青蜜柑」にして「万国旗」で運動会を表現したのが上手だと思いました。