おうちで紫式部展 解説「奉祝吉祥令和石山」源氏物語篇
こんにちはなのじゃ
梅雨入りしたのじゃ
雨のお寺も良いものなのじゃ
拝観を再開した石山寺では、
皆に気持ちよくお参りいただけるよう
細心の注意を払っておりますのじゃ
ご協力よろしくお願いしますのじゃ
前回は「紫式部篇」として、
石山寺に伝わる紫式部の伝説についてご紹介したのじゃ
本日は
「おうちで紫式部展」源氏物語篇
をお届けしますのじゃ
『源氏物語』は紫式部によって今から1000年以上も前に書かれた、
世界最古の長編小説なのじゃ
よく王朝の華やかな恋物語と紹介される『源氏物語』じゃが、
これは恋愛だけを描いた作品ではないのじゃ
主人公 光源氏の栄光と没落、関係をもつ女性たちの愛、悲しみ、生き様なども含めた
とても深いテーマが物語には描かれておる
源氏物語の根底には仏教思想が流れているとも言われておるのじゃ
まだ読んだことがないという人も多いかもしれんが、
これを念頭に置いて、ぜひ一度読んでみてほしいのじゃ!
源氏物語ゆかりの品々
石山寺は源氏物語起筆の地として知られており、
昔からさまざまなの場面を描いた色紙や画帖、冊子などが所蔵されているのじゃ
最初は屏風についてご紹介するのじゃ
今回の展示では、
土佐光芳「源氏物語図屏風」、
狩野養信「源氏物語図屏風 乙女」、
伝狩野養信「源氏物語図衝立 初音」(衝立)がみられるのじゃ
屏風は1つだけで「一隻」、
2つ合わせて1セットの場合は「一双」と呼ぶのじゃ
今回展示中の屏風はどちらも六曲一双なのじゃ
土佐光芳「源氏物語図屏風」(六曲一双)
土佐光芳「源氏物語図屏風」は、
『源氏物語』五十四帖の中から複数の帖の一場面を抜き出して、
屏風の各所に配置し、場面は霞によって区切っておるのじゃ
全体図
屏風は細かいところを見ていくとたくさんのできごとが描かれているのじゃ
この屏風には右隻(うせき:向かって右)に
「桐壺」「帚木」「若紫」「空蝉」「葵」「紅葉賀」、
左隻(させき:向かって左)に
「澪標」「絵合」「野分」「常夏」「若菜上」「若菜下」が描かれているのじゃ
各帖はこのような配置になっておる
右隻の各場面じゃ
54帖から構成される『源氏物語』のうち、
それぞれの帖の名場面ともいえるシーンが描かれておるのじゃ
①桐壺
主人公である光源氏が元服する場面じゃ
東宮の元服の式に劣らない、豪華な式だったのじゃ
②帚木
五月雨の夜、光源氏を中心とした若者たちが女性談義に花を咲かせる
「雨夜の品定め」の場面じゃ
右側、何やら楽しそうに若者たちが話しておるのう
③空蝉
空蝉とその娘が碁を打っているのを、光源氏が垣間見(かいまみ)している場面じゃ
なかなか男女が出会うことができない当時、こういった出会い方もあったのじゃ
⑤若紫
光源氏が若紫を見出す場面じゃ
これは『源氏物語』のなかで一二を争う名場面じゃな
雀の子が逃げてしまったことに泣いている幼い若紫を、光源氏が初めて見つけるのじゃ
霞の上には小さな雀が描かれておるのじゃ
⑦紅葉賀
紅葉の木が描かれ、舞楽を披露する光源氏と頭中将が描かれておるのじゃ
御簾の向こうでは桐壺帝と藤壺が舞いを眺めているのじゃ
⑨葵
葵上と六条御息所の車争いの場面じゃ
このことで六条御息所のプライドはズタズタになり、
生き霊となる大きなきっかけになってしまうのじゃ
つづいて左隻じゃ
⑭澪標
須磨から帰京した光源氏が住吉大社にお礼参りに行く場面じゃ
⑰絵合
冷泉帝の前で、梅壺の女御と弘徽殿の女御が
秘蔵の絵を出し合って競う場面じゃ
㉖常夏
六条院の釣り殿で、川魚などを調理させて酒宴を開いている場面じゃ
㉘野分
激しい台風(野分)が六条院を襲い、女御たちが慌てているのじゃ
見舞いに訪れた夕霧は思いがけず美しい紫の上を見てしまうのじゃ
㉞若菜上
公達が蹴鞠をしておる場面じゃ
向かって左端の屋敷を見ると、御簾の隙間から女三宮の姿が垣間見え、
飛び出した猫の姿もあるのじゃ
当時のお姫様は男性に顔を見られてはいけないので、
これは大変なことなのじゃ
㉟若菜下
正月、六条院で女楽を催した場面じゃ
様々な楽器が描かれているのじゃ
こんなふうにたくさんの物語が一双の屏風に描かれているのじゃ
物語を読み込んだ人は、どれがどの場面か当ててみるのも楽しいし、
まだ読んでいない人もどんな話か想像するのも良いのじゃ
こちらは狩野養信「源氏物語図屏風 乙女」
「乙女」の帖から、
新嘗祭で美しい五節の舞姫(ごぜちのまいひめ)が渡ってくる場面を
描いているのじゃ
雅なのじゃ・・・
(展示はしていないのじゃが、養信の「乙女」の屏風は対となる「紅葉賀」の屏風もあるのじゃ
展示する機会があればお知らせいたしますのじゃ)
伝狩野養信「源氏物語図衝立 初音」
こちらは屏風ではなく衝立なのじゃ
新春のお祝いに、明石の姫君に生母明石の御方から贈り物と和歌が届いた場面が
描かれているのじゃ
左が光源氏、右が明石の姫君じゃな
新春の贈り物や文、お餅といったさまざまなものが描かれていて
とても美しい衝立なのじゃ
続いて、絵巻もご紹介するのじゃ
こちらは「源氏物語絵巻 湖水五十四帖」という絵巻じゃ
『源氏物語』1帖「桐壺」から28帖「野分」の各場面を描いた
調度品が湖水にたゆたう様を描く珍しい絵巻物じゃ
「湖水五十四帖」という題名からわかるように、
29帖以降を描いた巻があったはずなのじゃ
この絵巻は、石山寺本堂で紫式部さんが筆をとる姿から始まるのじゃ
「絵合」の部分
二曲屏風に17帖「絵合」の場面が描かれておるのじゃ
さきほどの屏風にも「絵合」は登場したのじゃが
絵合は平安貴族の「あそび」のひとつで、
左右に分かれて持ってきた絵を出し合い、その優劣を競うのじゃ
今回は『源氏物語』の場面を描いた屏風、衝立、絵巻をご紹介したのじゃ
こういった絵は「源氏絵」といわれ、調度品や工芸品にも
多く描かれたのじゃ
今回展示している以外にもたくさんの源氏絵にかかわる宝物が
石山寺には所蔵されておる
別の機会にもお楽しみにしていてほしいのじゃ
楽しんでもらえたなら幸いじゃ
ではまた次回をお楽しみに、なのじゃ!