お知らせ

2025年11月5日お知らせ

第六回石山寺俳句大賞 入選発表

今年も石山寺俳句大賞に多くの方にご参加いただき誠にありがとうございました。
全479句の投句から入選作を決定しました。入選された方、おめでとうございます。

応募総数 479句


◯紫式部賞(最優秀賞)2本

・石山寺・門前共通商品券「光ルくんチケット」3000円分ほか

秋雨の 濡れて月行く 蝸牛かたつむり
蝸牛は夏の季語なので「季重なり」の句ではありますが、秋雨に蝸牛が月に行く情景が、長く暑かった夏の余韻とその名残りを抱えながら、秋へ移ろう季節感がしっとりと感じられます。
同時に、まるで月に帰る姫を乗せた牛車を思い起こさせるような想像がふくらむ「紫式部賞」にふさわしい作品です。

くらやみの こんなに青し 月雫
植物などの葉についた小さな露が、まるで秋の月からこぼれ落ちたような光る情景を表す「月雫(つきしずく)」という美しい響きが、全体の明暗のコントラストをうまく表現しています。
秋の夜明け近く、「ブルーアワー」と呼ばれる空が深く青く染まる時間の静けさと自然の光が生み出す瞬間を切り取ったような、そんな見方もできるとても詩的な美しい一句です。

 


◯松尾芭蕉賞(優秀賞)3本

・石山寺・門前共通商品券「光ルくんチケット」2400円分ほか

月照らす 夜空海原 鯨雲
秋の空を雄大に泳ぐ「鯨雲」のダイナミックな姿が目に浮かんでくるようです。
月の明かりが夜空を神秘的な世界に変える、それはまるで大海原が広がっているような錯覚すら覚えるような感覚をうまく表現しています。

膝に乗る 愛猫温し 秋来る
名月を待ちながら縁側か部屋の中から夜空を見上げていたら、ふいに猫が膝の上にジャンプしてきた光景がとても微笑ましく思える句です。ご主人の膝に乗る愛猫のホッとする安心感と少しひんやりとしてきた季節の変わり目をその温もりで実感する様子が、こちらまであたたかい気持ちにさせてくれます。

月きれい 吾子が指さす 池の中
空に浮かぶ月ではなく、池に浮かぶ月を見て感嘆する様子を詠んだ親子の愛情深い作品です。
水を張った棚田に映る月を「田毎の月」として、日本でも古くから和歌や絵にも登場しています。
かの松尾芭蕉も観月の名所と呼ばれた「姨捨の棚田」を訪れ、月を愛でたといわれています。

 


◯石山秋月賞(佳作)5本

・石山寺・門前共通商品券「光ルくんチケット」1200円分ほか

月冴えて 光る瓦の 波を出し
満月の光が屋根の瓦を照らし出し、まるで波のような連続したうねりを感じさせる情景が浮かぶような句です。本来、海ではない瓦屋根を海に見立てて表現した創造性豊かな作品です。

コンパスで 孫と描くは 名月や
お孫さんと祖父もしくは祖母が共有する幸せそうな様子が伺えます。コンパスで描いた円を満月に見立てた、どこかほのぼのとした満ち足りた生活の一コマがうまく表現されています。

観音の 慈悲の半眼 秋の月
観音菩薩は優しい表情を浮かべ、目も見開いてもなく閉じてもいない半眼(はんがん)のお姿をされていますが、これは観音経の中の「慈眼視衆生」とあるように慈悲の眼で衆生をみつめておられるからだといわれています。その半眼を下弦の月に見立てて気持ちを整えるのもいいかもしれません。

玉吸いに 昆布うかべて 朧月
「玉吸い」とは玉子の吸い物のことであり、おぼろ昆布を浮かべるとお椀の中には朧月。
「朧月」の季語は秋の月見の頃と思われがちですが、実は霞や雲でかすんだ春の季語として使われます。
この作品の潔さは、まるで100マイルの真っすぐストレートの球が投げ込まれたかのようです。

瀬田川の 光る水面や 月の雲
石山寺の前を流れる瀬田川のキラキラと光る水面を見ながら、中秋の名月を待ちわびて夜空を見上げても、曇っているため姿を見せない情景の対比を表現しています。
かなわぬ「石山の秋月」への哀愁がそこはかとなく感じられる句です。

 


◯雅賞(特別審査員賞)2本

・石山寺・門前共通商品券「光ルくんチケット」3000円分ほか

満月の 視線感じて ペダル止め
この17音には、景色と動きがあります。満月は眺めるものなわけですが、擬人化して「見る/見られる」の関係を逆転させることで、世界を一気に広げ、僕たちのちっぽけさや宇宙の深遠さにも注意を向けさせています。映画的と言いたくなる表現に感じ入りました。
(評:野村雅夫)

秋茄子を 母が遺した ぬか床へ
この作品には、短い時間の小さな動きの中に、長い時間と大きな感慨が封じ込められています。ぬか床に野菜を入れる作業は、お母さんも同じようにしていたことですよね。受け継いだのは、ぬか床だけではなく、その生活習慣でもある。しかも、ぬか床というのは「醸す」装置です。この俳句を鑑賞する僕たちの思い出も引っ張り出して醸してくれるようです。
(評:野村雅夫)

 


【審査員より】
今年もホームページとX(旧ツイッター)での投句受付をさせていただきましたが、例年より受付期間が長かったこともあり、たくさんの投句をいただきましたこと心より御礼申し上げます。
今年は、大阪万博2025が開催されたこともあり、万博の思い出を詠んだ句も多く投句いただきました。
残念ながら選考にはいたりませんでしたが、皆様の記憶にしっかりと残る一年になったのではないでしょうか。
次回開催することになりましたら、また皆様のたくさんの名句を心待ちにしております。

今回も特別審査員を務めていただいた野村雅夫さんのラジオ番組 FMCOCOLO「CIAO765」でも度々、俳句大賞を紹介していただきましたこと、この場をお借りして御礼申し上げます。

FM COCOLO「CIAO765」(毎週月~木 11:00~15:00)
https://cocolo.jp/site/blog/1110

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