ご利益とは何なのか
先日、本堂にいるときに「弥勒菩薩さんのご利益はなんですか」と聞かれました。
弥勒菩薩は兜率天でさとりに向けて修行をしていて、
未来に成道して人の世に降りてこられ、そこで説法をされる……ということで
↑に書いたようなお話をしてお答えしました。
その方は少し首をかしげて「ちょっとわからんな」と言って御堂を出られてしまいました。
私の説明の仕方がわかりにくかったのかも、としばし反省しました。
そのあとでふと思ったのは、
「もしかしてわかりやすいご利益を言ってほしかったのかな」ということでした。
例えば石山の観音さまには「安産・福徳・縁結び」といったご利益があります。
お不動さまにも「厄除」というご利益があります。
このように書くととてもわかりやすいなと感じます。
少し調べてみたのですが、弥勒菩薩さまについては、そういったわかりやすい言い方はしません。
強いて言うなら「滅罪」でしょうか。
大きく言うと、生きとし生けるものが皆幸せであるように救済されるのが弥勒菩薩です。
そして多くの真言僧が弥勒菩薩の兜率天へと往生を願ったことを考えると
これは浄土信仰ともとれます。
現世利益の仏さまとは言えないのかもしれないと思います。
そもそも、現世利益とは何なのか。
どうしようもない苦しみのなかにいるとき、ちゃんと生きていけるように
仏さまから福徳を与えられることだと思います。
仏さまにお願いしたから世間の願い事が叶った、それだけが利益ではないと思います。
なぜなら、仏さまは人の願いを思うままに叶えるための存在ではないからです。
なにごとも変わっていく世の中で、
生きとし生けるものが、ちゃんと生きていけるように出会う存在が仏です。
だからその人がどうなったら本当に幸せになるか、仏さまは長い目で見て知っているのです。
叶うことで幸せになる願いなら、必ず叶います。
また、願ってもかなわない願いがあるのはそのためです。
かなわないことによって仏がその人に何かを気づかせるからです。
なので、苦しい時は福徳を願っていいのだと思います。
ただその先にはもっとすばらしいものがあると、どこかで覚えておいて、
願いがかなった後も、また願いがかなわなくても、
信仰を続けていただけたらいいな、と思っています。