石山多宝くんの「おうちで紫式部展」

2021年9月7日石山多宝くんの「おうちで紫式部展」

【番外編】おうちで特別拝観「怒りの仏 明王」

みなさまこんにちはなのじゃ

石山寺がある滋賀県にも緊急事態宣言が発令されたのじゃ
外に出にくい時期ではあるのじゃが
本堂内陣ではこういった時期だからこその特別拝観を行っておるのじゃ

その名も、

「怒りの仏 明王」

仏さまといえばやさしいお顔をされているイメージが一般的なのじゃが、
今回の特別拝観では怒ったお顔、忿怒相(ふんぬそう)で人々を導く明王が中心なのじゃ

不動明王に代表される明王は、怒りの表情を浮かべ、怒りの力で人を仏道に導く仏なのじゃ
なぜ明王が怒った顔をされているかわかるかな?

これは仏法に帰依しない、度しがたい衆生を怒りの力で人々を正しい仏道に導くためなのじゃ
怒りの姿は、「教令輪身(きょうりょうりんじん)」というのじゃ

仁王経陀羅尼念誦儀軌(石山寺深密蔵聖教 第65函6号)

理趣釈経漫荼羅(石山寺深密蔵聖教 第93函3号)

愛染明王は人が皆持っている煩悩を、さとりの心に変えていくという仏さまなのじゃ
息災、増益、降伏、敬愛のご利益があるのじゃ
そのお姿は一面三目六臂!忿怒の形相を浮かべているのじゃ

「大毘盧遮那成仏成就法 巻中」(石山寺深密蔵聖教 第69函9号2)

不動明王は『不空羂索神変真言経』や『大日経』というお経では「不動使者」「不動如来使」というお名前で登場するのじゃ

不動明王は曼荼羅の中心に位置する仏、大日如来の使者として
救いがたい衆生をも救う働きをするのじゃ

不動明王形像(石山寺深密蔵聖教 第93函29号)

この不動明王はよく見ると「カンマン」という梵字になっているのじゃ
これは不動明王を表す梵字なのじゃ
片方の手に剣、もう片方の手に羂索(縄)を持って両目を見開き、上歯で下唇を噛むという怒りの表情(忿怒相)を浮かべているのじゃ
頭の左側から肩にねじるように辮髪を垂らして頭頂に蓮華を頂くといったお姿は、弘法大師(空海)さまが唐より請来した不動明王のお姿なのじゃ

ところで、
石山寺で『源氏物語』を起筆した紫式部の『紫式部日記』には、不動明王に関わる修法が登場するのじゃ

それは「五壇法」と呼ばれる不動、降三世、大威徳、軍荼利、金剛夜叉の五大明王を本尊とした修法なのじゃ
五壇の御修法、五大尊の御修法とも呼ばれたこの修法は、天皇や摂政など貴人の病平癒、出産をはじめとする調伏のため、
十世紀半ば頃から十六世紀前半頃まで行われていたそうなのじゃ
『紫式部日記』『栄花物語』の中宮彰子の敦成親王出産の場面で五壇法が修される場面があるのじゃ
『源氏物語』「賢木」の帖や『枕草子』「きらきらしきもの」でも挙げられる、貴族にとってはよく知られた修法だったのじゃ

五大明王(五大尊)は金剛界曼荼羅の五智如来(大日、阿閦、宝生、阿弥陀、不空成就)の忿怒のお姿なのじゃ

不動明王は一面二臂、右手に剣を、左手に羂索を執り瑟瑟座(しつしつざ)という台座に座っているのじゃ

降三世明王は三面三目八臂、それぞれの足で地に倒れた大自在天とその妻である烏摩妃を踏みつけているのじゃ

水牛に乗っているのが大威徳明王なのじゃ

大威徳明王は六面六臂六脚と、お顔と腕と足が六つずつあるのじゃ!しかも六面すべて三目なのじゃ

一面三目八臂、体に蛇を巻き付けているのが軍荼利明王、三面六臂で正面のお顔が五目なのが金剛夜叉明王じゃ
  

こちらは期間限定で公開していた重要文化財指定の「不動明王二童子像」のお軸なのじゃ

忿怒相の不動明王は右手に三鈷柄剣(三鈷杵が柄になった剣)、左手に羂索を持って瑟瑟座に座っているのじゃ
火炎光背の中には模様のように迦楼羅(かるら)という鳥の顔が七つ描き込まれるのじゃ

迦楼羅は煩悩の毒龍を食べるという伝説の鳥なのじゃ

不動明王の両脇にいるのは従者の矜羯羅童子(こんがらどうじ)と制咜迦童子(せいたかどうじ)なのじゃ

  

この二人は不動明王に使えている童子で、
矜羯羅童子は恭敬小心の者として穏やかな表情を浮かべ、
制咜迦童子は悪性の者として険しい表情を浮かべているのじゃ

いかがだったかな?

いまは不安の多い世の中になってしまい、怒りを抱えている人も多いと思うのじゃ
その中で、明王さまの怒りの姿をお参りしていただいたのじゃが
明王の怒りは、慈悲にもとづいたものだということなのじゃ
皆、自分の抱えている怒りというものをもう一度考え直す機会としていただきたいのじゃ

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