おうちで紫式部展 解説「奉祝吉祥令和石山」仏さま篇
こんにちはなのじゃ
石山寺は6月1日から開門しておりますのじゃ
長らくお待たせした皆さまにはお詫びを申し上げますのじゃ
拝観の際は、手指の消毒やマスクの着用の
ご協力をお願いしたいのじゃ
詳しくはこちら
豊浄殿の「石山寺と紫式部展」も開館しておるのじゃが、
このコーナーでも引き続き、解説を続けていきたいと思うのじゃ!
本日は
「おうちで紫式部展」仏さま篇
をお送りするのじゃ
よろしくお願いしますのじゃ
石山寺のご本尊(ほんぞん:中心となる仏さま)は如意輪観世音菩薩さまなのじゃ
ご本尊さまとともに、石山寺には多くの仏さまがいらっしゃるのじゃ
今回はその中でも観音さまとゆかりの深い
仏像のことをご紹介しようと思うのじゃ
仏さまの姿
仏さまの姿は、「仏像」として表されておるが、
仏教を開かれたお釈迦さまの時代には、
仏像というものはなかったのじゃ
そもそも「仏」とはブッダのことであり、
お釈迦さまのように「目覚めた人」(=真理に目覚めた人)のことであったのじゃ
展覧会に出ている「銅造釈迦如来坐像」(重要文化財)
時代が下り、仏教が様々な地域に伝わるにしたがって
「阿弥陀如来」「薬師如来」などの如来
「地蔵菩薩」「観音菩薩」などの菩薩
「不動明王」「大威徳明王」などの明王
「毘沙門天」「吉祥天」などの天部
といった様々な仏が生まれていったのじゃ
そういった仏さまの姿を表したのが仏像なのじゃ
仏さまのお姿は、お経に説かれておるのじゃ
具体的にどんな仏さまなのか、どんなお姿をしていて何を持っていて、
ということが書かれているのじゃ
このへんのお話は長くなりそうなので、
ざっくりとした説明だけにしておくのじゃ・・・
石山寺の観音さま
石山寺は古来より観音さまのお寺として信仰をあつめておるが、
観音さまは正式には「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」というのじゃ
「世の中の音(助けを求める人の声)を観じて」迷える人々を救済する仏さまなのじゃ
観音さまには全部で七種類あり、
聖観音、千手観音、馬頭観音、十一面観音、如意輪観音、准胝観音、不空羂索観音
がいらっしゃる
そのなかでも、石山寺の御本尊さまは如意輪観音さまなのじゃ
如意輪観音さまは一般的に六臂(ろっぴ:6本の腕)の方が多いのじゃが
現在本堂で公開中の、石山寺のご本尊さまは
平安時代に作られた二臂(にひ:2本の腕)のお像なのじゃ
こちらは淳浄館(じゅんじょうかん)にある如意輪観音さまのお姿じゃ
石山寺のご本尊さまを模したお像なのじゃ
***
ここでちょっぴり専門的なお話を。
平安末~鎌倉時代に作られた『図像抄』という仏さまの図鑑があり、
たくさんの仏さまの姿が描かれておる
二臂の如意輪観音さまは『如意輪陀羅尼経』というお経のなかで
「左手に蓮華を持って右手は説法印を結ぶ姿」と書かれているのじゃが、
石山寺のお像はそれとは違う姿と書かれておるのじゃ
説法印▼
そこには、
右手は施無畏印を、
左手は膝の上で与願印を作り、
奈良の龍蓋寺(岡寺)、東大寺大仏殿左脇侍の如意輪観音さまと同じように
「左足を垂下する」とあるのじゃ
施無畏印と与願印▼
さらに、石山寺の観音さまは右手に三枝に分かれた蓮華を持つとあるのじゃ
ご開扉中のご本尊様の姿はまさにその姿なのじゃ
***
ほとけさま
というわけで、「ほとけさま」の章に突入するのじゃ
密教には曼荼羅というものがある
曼荼羅には多くの仏さまが描かれておるが
それらを描くことによってさとりの世界を表しているのじゃ
大日如来坐像(平安時代)
曼荼羅には金剛界曼荼羅と胎蔵曼荼羅がある
どちらも中心に大日如来さまがいらっしゃるのじゃ
金剛界曼荼羅は『金剛頂経』、
胎蔵曼荼羅は『大日経』をもとに描かれている
それぞれ智慧と慈悲を表す曼荼羅といわれておる
同じ大日如来さまでも、金剛界と胎蔵で印(手ぶりや指の形)が違うのじゃ
わしの中にいらっしゃる大日先生も金剛界の大日如来さまなのじゃ
チラッ
秘仏であるご本尊さまの御扉は、通常閉められておるが
見えない間にも秘仏の代わりを果たしてくださってるのが
「御前立尊(おまえだちそん)」じゃ
如意輪観音半跏像(旧御前立尊、重要文化財、平安時代)
御前立尊とは、秘仏の代わりに見えるようにお参りいただく、
同じ姿の仏さまのことじゃ
こちらの如意輪観音さまのお像は、昔本堂におられた御前立尊だったのじゃ
ご本尊さまと少し姿が違い、右手に蓮華を持っておられないのじゃ
実は本堂のご本尊さまは平安時代後期に造られた二代目のお像で、
それまでの塑像(土の像)のお像は火事で崩壊してしまったのじゃ
このお像の姿から、当初の塑像は蓮華を持っておられなかっただろうと
推測されているのじゃ
三十三応現身像のうち、毘沙門天身像(左)、婆羅門婦女身像(右)
三十三応現身(さんじゅうさんおうげんしん)とは、
観音さまが人を救済するために変化する33の姿のことじゃ
例えば「大自在天(シヴァ神)」、「毘沙門」、「長者」、「比丘(僧侶)」、
童男、童女、龍、阿修羅などなど。。
三十三応現身のことは『妙法蓮華経(法華経)』観音菩薩普門品第二十五、
通称「観音経」に、観音さまはそれぞれが求める姿に変身して現れ、
お救いくださると説かれておるのじゃ
西国三十三所の「三十三」もこの応現身の数にちなんでいるのじゃ
石山寺のご本尊様のご開扉も「三十三」年に1度、
「石山寺縁起絵巻」も全「三十三」段なのじゃ!
三十三づくしじゃな・・・
童男童女とはこどもの姿、奈良・興福寺のお像でも有名な「阿修羅」は
三面六臂(3つの顔と6本の腕)の姿じゃ
本来の優しげな菩薩さまではない姿にも変身なさるのじゃ
現在は三十三応現身像のうちの毘沙門身像と婆羅門婦女身像を展示中なのじゃ
毘沙門身は毘沙門天さま、別名 多聞天(たもんてん)さまのことなのじゃ
本堂にも大きな毘沙門天さまがいらっしゃるし、
境内には毘沙門堂という御堂もあるのじゃぞ
婆羅門(ばらもん)はヒンドゥー教の司祭者で、婦女とはその奥さんを指すのじゃ
仏教の仏ではない人にさえ変身されるとは、懐の深い仏さまなのじゃ・・・
先ほど話した「観音経」を絵画化したものが
アメリカ・メトロポリタン美術館の所蔵する「観音経絵巻」じゃ
メトロポリタン美術館 公式ホームページのリンクを貼っておくぞ
今回の展示では1984年に角川書店から出版された、
コピーの絵巻を参考資料として並べて展示しておるのじゃ
煌びやかな絵巻で、とてもわかりやすく観音さまの功徳が描かれているので、
ぜひご覧いただきたいのじゃ
浅井亮政公ゆかりの如意輪観音半跏像(室町時代)
こちらも如意輪観音さまのお像じゃ
こちらは、戦国武将 浅井亮政(あざい すけまさ)公ゆかりの如意輪観音さまなのじゃ
石山寺は淀殿の手厚い寄進を受けて大修復が行われたという歴史を持つが、
亮政公は淀殿の曾祖父にあたるお方じゃ
その亮政公が弥勒寺の池の中よりみつけ、平成6年に石山寺に寄進されたお像なのじゃ
今年は明智光秀の大河ドラマをしているようじゃ
戦国時代に興味のある方は、ぜひお参りいただきたいのじゃ
仏さまはまだほかにもいらっしゃるのじゃが
こちらの解説ではここまでとしておくのじゃ
暑くなってきたので、熱中症に気をつけての
次回はお待ちかね、「源氏物語」にかかわる宝物をご紹介するのじゃ!